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最高裁判所大法廷 昭和41年(オ)984号 判決 1968年11月13日

上告人

門田タマエ

ほか五名

右六名代理人

三宅仙太郎

被上告人

村上真太郎

ほか一名

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告人ら代理人三宅仙太郎の上告理由第一点について。

本件記録によれば、上告人らは、本件係争物件は上告人らの所有(共有)に属するとして、所有権(共有権)に基づき被上告人らに対しその所有権移転登記抹消登記手続請求の訴(後に本件係争物件の持分の割合による所有権移転登記、建物退去明渡等請求の訴に変更)を提起し、上告人らの所有権取得の原因として予備的に昭和一三年六月二七日を始期とする取得時効の完成を主張したのに対し、被上告人らは、本件係争物件につき自己の所有権を主張し、これと相容れない上告人らの所有権を否認して上告人らの本訴請求を棄却するとの判決を求める旨の答弁書を提出し、第一審の昭和三三年三月四日第二回準備手続期日においてこれを陳述したことが明らかである。

右の場合において、被上告人らの右答弁書による所有権の主張は、その主張が原審で認められた本件においては、裁判上の請求に準ずるものとして民法一四七条一号の規定により上告人らの主張する二〇年の取得時効を中断する効力を生じたものと解すべきである。けだし、原判決は、本件係争物件につき、上告人らに所有権(共有権)に基づく所有権移転登記請求権がないことを確定しているに止まらず、進んで被上告人らにその所有権(共有権)があることを肯定していると解されるのであるから、時効制度の本旨にかんがみ、被上告人らの前示主張には、時効中断の関係においては、所有権そのものに基づく裁判上の請求に準じ、これと同じ効力を伴うものとするのが相当であるからである。したがつて、取得時効の中断があつたとした原審の判断は正当であつて、原判決に所論の違法はなく、論旨は採用しえない。

同第二点について。

取得時効に関しても消滅時効におけると同様、裁判上の請求が時効中断の効力を生ずるものと解すべきである(大審院昭和一二年(オ)第二四二九号昭和一三年五月一一日判決、民集一七巻一一号九〇一頁、同昭和一五年(オ)第八四五号昭和一六年三月七日判決、判決全集八輯一二号九頁参照)から、これと同趣旨の見解に立つ原審の判断は正当であつて、原判決に所論の違法はなく、論旨は採用しえない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条一項本文に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(横田正俊 入江俊郎 奥野健一 草鹿浅之介 長部謹吾 城戸芳彦 石田和外 田中二郎 松田二郎 岩田誠 下村三郎 色川幸太郎 大隅健一郎 松本正雄 飯村義美)

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